動画マーケター&エディターのTAKAです。
卒業ムービーのスライドショー制作は、きちんと作ろうと思ったらそれなりの時間を要する作業である。
どうしても手慣れていない初心者のかたは、以下のような状況に陥ってしまうことが多い。
✓何から手を付けて良いか分からず、とりあえず闇雲に取り組んでみたが作業効率が悪く、大きく時間をロスしてしまう。
✓完成間際になって大きなミスに気付き、時間が無い中で大幅な修正を強いられてしまう。
大概はお勤めの後の夜間や、休日を利用して制作にあたるはず。
そんなあなたの貴重な時間を無駄にさせるわけにはいかない。
そこで、専業である私が普段どのような手順で作業を進行し、どのような点に注意を払っているのか。
作業手順を時系列にそって解説していこうと思う。
ここでは静止画写真を想定して解説していくが、動画スライドショーの場合は適宜応用して想定していただきたい。
業界の内側をバラしてしまうようで後ろ髪を引かれる思いだが、これから頑張ろうとしているあなたの一助となれば幸いである。
1:BGMを決める
まず初めにやるべきことはBGMの決定だ。
意外に思う方も多いと思うが、これにはいくつかの大きな理由がある。
これは私の理念なのだが、
「卒業ムービーの完成度は、6割がBGMで決まる」
というものがある。
少々偉そうで恐縮だが、長年携わってきた素直な感想だ。
人間は耳から入る情報が感情に与える影響は、思っているより大きい。
仕事柄いろいろな方が制作したムービーを拝見するが、例え写真が良くてもBGMの選曲がイマイチで、もったいない仕上がりになっている作品も少なくない。
その逆に、特にこれと言った写真は見当たらないが、BGM選曲のセンスが素晴らしく感動的な作品になっていることもある。
それだけBGMが完成度を底上げしてくれるパワーはあなどれないのだ。
だから作品のイメージを決定するBGMは、一番最初に決めておきたい。
それだけではない。
これからお伝えする作業の効率化においても、BGMを先に決めておくことが重要なのだ。
卒業ムービーのBGM選びならば、この記事がお役に立てるかもしれない。
もし何も思いつかないようであれば、ご一読いただきたい。
2:写真をフォルダごとに分ける
BGMが決まったら、撮り溜めておいた生徒たちの写真を整理しよう。
お薦めの方法は、デスクトップなどに各生徒の名前のフォルダを作り、そこに写真を入れていく。
ここで私のフォルダ作成を例に解説しよう。
ざっとこんな感じで写真の種別分けをしておくと良いだろう。
これをすると何が良いか?
一番の恩恵は生徒の写真数の偏りを把握できるのだ。
よくありがちな話だが、目立つ生徒は写真数が多いが、そうでない生徒は少ないことがある。
もちろん完成ムービーの写真枚数に差があっては後々問題になる。
だからこの段階でそれを把握しておきたい。
現段階であれば少ない生徒の写真を入手したり、追加撮影したりできる時間があるからだ。
これは風景写真にも言える。
「整理してみたら人物写真ばかりだった」
ということも珍しくない。
人物写真ばかりだと、いささか展開が単調になる。
やはり適量の風景写真は作品に奥行きを持たせるので、ぜひこの時点で用意しておきたい。
3:写真の必要枚数を把握する
先ほどのフォルダ分けをすることにより、
「どの種類のフォルダに、どのような写真が、どのくらいの枚数あるか」
のバランスを大雑把にでも把握できたと思う。
ここからは、実際に必要な枚数を算出していく作業になる。
ここで活躍するのが最初に選んでおいたBGMだ。
解説は、私がメインで使用しているAdobe PremiereProでの作業画面で進行するが、どの編集ソフトでも同様の流れになるので、ご自分のソフトに置き換えてご覧いただきたい。
まずはBGMの音声クリップを編集ソフトのタイムラインに乗せよう。
次に、曲の拍子に合わせて音声クリップにマーカーを打っていく。
基本的に曲の章節のリズムに合わせて写真を切り替えたいので、このマーカーの場所が次の写真のスタート地点というわけだ。
Adobe PremiereProの場合、キーボードの「M」がマーカーを打つショートカットキーなので、曲を流しながらリズムよく「M」をポンッポンッと押していくのだ。
多少タイミングがずれたとしても、後からいくらでも修正可能なので、ここはザックリでOKだ。
これを曲の最後まで行おう。
単純にこのマーカーの数だけ写真が必要ということになる。
もちろんここから微調整をしていく必要はあるが、現時点で神経質になる必要はない。
4:タイムラインに写真を配置する
さて、ここでようやく写真を編集ソフトのタイムラインに乗せる作業となる。
写真の配置作業の中でもいくつか手順があるので、順番にご紹介したい。
1)キメ写真や集合写真を配置する
これも意外に思われるかもしれないが、オープニングやエンディング、曲のサビなどの重要な部分に、印象的な「キメ写真」や「集合写真」を先に当てがってしまうのだ。
ここは作品のイメージを決定付ける代表的なポジションだ。
すでに制作者自身でも、何となく「この写真はこの場所」と決まっているのではないだろうか?
大概において、その直感は間違っていない。
むしろその作品イメージを最後までブラさないために、最初に配置してしまおうと言うのだ。
2)生徒個人の写真を何枚ずつにするか算出する
残ったマーカー数(まだ写真を配置していないポジション)を数えて、各生徒の個人写真を何枚ずつにするか見当をつけよう。
例えば残りのマーカーの総数が30個で、生徒数が10人だった場合、
30÷10=3
単純計算でひとり頭3枚ずつになるが、まだ未配置の「複数人写真」や「風景写真」も入れる必要がある。
そうなると、個人写真はひとり2枚ほどにしておいて、残り10枚を他の写真たちで振り分けることになる。
この配分は感覚でかまわないので、あまり神経質になる必要はない。
ここで大事なのは、個人写真の枚数に偏りが出ないようにすることだ。
5:トランジションをつける
トランジションとは、写真と写真の表示を切り替える時の特殊効果のことである。
もちろん場所によっては、トランジションを使わず「パッ、パッ」と瞬時に切り替えても良い。
が、適材適所で使用するとムービーの印象を大きくアップさせてくれる。
ただし、多種多様のトランジションを詰め込みすぎることは禁物だ。
詳しくは下の記事で解説しているので参考にしていただきたい。
基本はあくまで、クロスフェード系(ディゾルブ系)を中心に構成したい。
一番オーソドックスであり、主張しすぎないところが使いやすい。
そしてココ一番の替り目で、少々見栄えのするエフェクトを入れると良いだろう。
卒業ムービーであれば、ライトリーク系やホワイトディゾルブなどがセンス良くマッチする。
6:写真に動きをつける
印象的なムービーに仕上げたいのなら、スライド写真に動きは不可欠だ。
動きのあるスライドと、そうでないスライドを比べてみれば、完成度の違いは一目瞭然だろう。
写真に動きをつける操作方法は、編集ソフトによって違ってくるので割愛させていただく。
ここでは、この作業をする上での重要なポイントを2つほど紹介させていただこう。
1)写真に動きをつける作業はトランジションを設定した後にする
「なんのこっちゃ?」
と思われるかもしれない。
普通なら、1枚1枚の写真の動きを付けた後で、各写真をつなぐトランジションを設定したほうが良いと思われるだろう。
しかし最も多用するであろう「ディゾルブ」を後からつけると、動きがぎこちなくなるのだ。
折角スムーズになるように設定した写真の動きも、ディゾルブのクリップの間は動きが止まってしまう。
そしてディゾルブの切り替えが終了した時点から写真が動き出すのだ。
好みにもよるが、これがどうもしっくり来ないのは私だけであろうか…。
後からスムーズになるようにキーフレームの位置を調整できるが、全箇所いちいち修正するのはとても効率が悪い。
先にディゾルブを付けてしまえば、最初から任意の位置にキーフレームを打てるので、このような煩わしさは発生しない。
2)動きは大きくしすぎない
慣れないうちは、どうしても派手な動きにしてしまう傾向がある。
かく言う私も以前はそうだった。
「がんばって編集しました!」感を出したいからなのか、少ない動きでは物足らなくなり、ドンドン大げさな効果を追加したくなる。
もちろんそれは逆効果だ。
特に卒業ムービーやウェディングムービーなどの「品」や「感動」を求める作品においては、動きは控えめにが鉄則だ。
ガチャガチャ激しい動きの連続では、「心の琴線にふれる作品」にはほど遠いことは想像に難くないだろう。
「わずかに動いているかな?」と思わせる範囲でセンス良く魅せることができれば最高だ。
7:最初と最後にホワイトマットをつける
さあ、ここまで来たらゴールは目の前だ。
これまでの苦労を無駄にしないよう、細部まで手を抜かずに仕上げたい。
初心者の方がおろそかにしてしまうポイントとして、「最初と最後の気づかい」が挙げられる。
よく見かけるのが、出だしからいきなりバンッと映像が始まってしまったり、最後もいきなりプツンと終わってしまうもの。
これではいかにも「素人が作りました」と言っているようなものだ。
そこでお薦めしたいのが「ホワイトイン」「ホワイトアウト」という手法。
手法と言ってもそんなに大げさなものではない。
単に、白い画面から徐々に映像が始まったり、映像から徐々に白い画面になって終わるというだけの話。
これはご使用の編集ソフトによっても作り方が異なるが、あらかじめプリセットとして用意されているなら、そちらを適用しよう。
もし備わっていないようなら、白のカラーマットを作成して、エフェクトの「ディゾルブ」を適用したり、不透明度を下げていって映像が段々と見えるようにしよう。
8:BGMの音量を調整する
最後の工程はBGMの音量調節だ。
これをやっておかないと、「耳に痛い」作品に仕上がってしまう。
静止画(写真)のスライドショーと、動画のスライドショーでは目安が異なるのでそれぞれ紹介していこう。
静止画(写真)のスライドショーの音量調節
静止画のスライドショーの音量調節は簡単だ。
素材に音声が含まれていないので、単にBGMの音量を上げ下げすれば良い。
目安としては-5dbがピークとなるように調整しよう。
音量メーターを見ながら、だいたい-5db以下に収まるようになれば良い。
本格的にやるのなら「リミッター」などの音声エフェクトを使っての調整もアリだが、制作業者でもない限りそこまで追い込む必要はないだろう。
BGMの曲数が2曲以上の場合も同様だ。
前後の曲が、おおよそ同じ音量に聞こえる程度に合わせていこう。
動画のスライドショーの音量調節
素材が動画となると、少々気をつかう。
お察しのとおり、素材の音声とBGMとの音量バランスが発生してくるからだ。
これは素材によるので一概には言えないが、人の声は-5dbくらいに、BGMは-12db~-15dbくらいに調整するのがひとつの目安となるだろう。
ただこれもあくまで目安なので、聞こえかたによって適宜調整していただきたい。
素材が動画のスライドショーの音量調整は、できればスピーカーとヘッドホンの両方で行いたい。
エンドユーザーの視聴環境を想定して、両方の機器で確認しておくことがひとつの理由。
もうひとつの理由としては、スピーカーで聞き取れなかったノイズもヘッドホンなら拾えることが多い。
「え?こんな音入ってたっけ?」という事態を事前に防ぐ為に、面倒くさがらずにヘッドホンでの確認も並行して行うことを強くお薦めする。
まとめ
今回は専門業者である私が、普段から卒業ムービーを制作するにおいての手順をザックリと紹介させていただいた。
もちろん作品によっては若干の順序の入れ替えはあるが、おおよそこの順序で進行すれば大きな問題にはならないはずだ。
この記事が、忙しいあなたのムービー制作の一助となれば幸いである。